そらまめ
そらまめといえば、絵本「そらまめくんのベッド」(なかやみわ 作・絵 福音館書店)。子どもたちの大好きな「そらまめくん」シリーズは、一話ごとに「そらまめくん」と仲間たちみんながやさしさや思いやりの心を知りながら、読む者も一緒に成長していく素晴らしいおはなしです。野原の草花や生き物全ての表情がとても優しくて、穏やかな気持ちになり私も大好きな絵本です。
社会的養育で関わる子どもたちへのおはなし会で「そらまめくん」絵本を使う時に、おはなし会メンバーAさんは、家庭菜園からその日の朝に収穫したそらまめを持参して、子どもたちに見せます。そらまめのさやを手にとって、その大きさ、重さ、色、手触り、新鮮なにおいに触れさせます。そして、さやを開けて、「そらまめくん」の宝物のふかふかベッドを子どもたちに体験してもらいます。子どもたちは、水分たっぷりでみずみずしいふかふかベッドを指で押してはその感触を確かめ、触った自分の指の匂いも嗅いでみます。食事で出てくるそらまめの形は知っていても、さやに入っているのを見たことがないため、子どもたちは興味津々で眼を輝かせながら、一人ひとりさやを手に取り、そして、「そらまめくん」になってふかふかベッドで眠る心地よさを想い浮かべます。
私の母は県外に住む娘たちにそらまめを送る時、さやに入った状態で送っていました。そうすることで自然な鮮度は保たれるのですが、そらまめのさやが大きく空間を占めるため、さやから出して豆だけにしてチルドで送ればいいのにと私は思っていました。そのことを聞いた時母はこう言いました。「そのままがええんよ。さやから出すのを子どもと一緒にするんよ。」台所で親子一緒にテーブルにつき、さやを開けてそらまめを出す。豆を出しては、「大きい!小さい!」と笑い会いながらたわいもない話もする。作業をしながらだと不思議と力が抜けて、普段言えないことも言える。その些細な日常がかけがえのない思い出となる。親子が供に過ごす大切な時間だったと思うことでしょう。
そういう想いを一人ひとりの子どもに繋いでいきたいと、そらまめを見て思います。
(石丸)
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