四月の太陽

　私はこれまでに児童相談所等で子どもや家族の想いをたくさん聴かせてもらいました。その中に子どもリエゾンえひめへの参加につながる一つの想いがありました。
　児童相談所にいた四月のある日のこと、１人の女性が突然来られました。相談室に入った彼女は何も言わず、黄色く変色した一枚の紙を静かにテーブルの上に出したのです。それは子どもの特別養子縁組に関するものでした。その時、大粒の真珠のような涙が一つこぼれ彼女の頬を伝いました。私は思わず息を呑み沈黙の時が流れ、次の瞬間彼女の目から涙が止めどなく溢れ続けました。彼女は生まれた子どもを乳児院に預けてから一度も会いに行くことはありませんでしたが、預けた日に受け取ったその紙をこの三年間捨てることなく手元に置き続けていたのでは。彼女は一日たりとも子どもを想わない日はなかったことでしょう。実母である彼女にしかできない最高の贈り物、彼女の子どもへの想いを受け取ってあたたかい家庭に子どもをつなぐことができました。今、その子は一家の太陽となって家族の輪の中心にいます。
　四月になると彼女の流した真珠の涙を思い出します。そして、真珠の涙がまぶしく輝く太陽になるよう、子どもリエゾンえひめで子どものためにたくさんの想いをつないでいきたいと思います。
(石丸)

【次回：ここで咲く】
【前回：黄色い蝶】