コラム

戦後80年の夏

 2025年8月は戦後80年の節目のとき。この夏、作家の宇佐美まことさんが「13月のカレンダー」(集英社)を出されました。
 宇佐美まことさんは松山市在住の小説家で、これまでに30冊以上の作品を出されています。どの作品も社会的な問題と人を描いています。子どもに関わる作品も多く、「月の光の届く距離」(光文社)では里親等社会的養育を考える物語を描かれました。
 「13月のカレンダー」は、広島に投下された原爆による80年間の家族の物語で、広島と松山が主な舞台です。巻末の主要参考文献に「被爆60年記念誌、被爆65年記念誌」(愛媛県原爆被害者の会)や瀬戸内海汽船株式会社と石崎汽船株式会社の社史等が挙がっています。瀬戸内海を囲んでいくつかの家族の歴史が繋がることで、語られなかったこともわかってきます。宇佐美さんは資料を綿密に読み込み、多くの人から話を聞いて小説として形にします。小説という門戸の広いものにすることで、多くの人の目に触れて知ってもらうことができます。
 今回の作品で原爆を取り上げたことについて、宇佐美さんはこう言われています。「子どもの目線で原爆を書きたいと思った。子どもはどんなふうに感じたのか」「小説が入り口になればいい」「何か橋渡しができれば嬉しい」この節目の夏、多くの人にこの本を読んでもらえたらと私も思います。
 広島市出身の知人にこの本を紹介した時、表紙を見た彼女は目を丸く見開いて即座にこう言いました。「この景色は太田川のあの辺り」と。静かに流れる川と緑の遊歩道を人々が散策する平和で穏やかな広島の景色です。「祖母が語ったこと、家族のことを想いました」と彼女はことばを続けました。
 コラムの写真は松山市平和通の百日紅、松山でも穏やかな時間が流れています。この景色と安心安全な時間を子どもたちに伝えていくことが、戦後80年の今を生きる私たちの役目ではないでしょうか。
(石丸)

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