夏の終わりのSOS
夏の終わり、子どもも大人も物憂い空気に覆われて不安になることがあります。数年前のこの時期に私は、『私は西瓜が食べられない』(伊藤見桜作 第18回坊ちゃん文学賞佳作)をラジオで朗読する機会をいただきました。
先ずは「西瓜が食べられない」というタイトルに興味を持ち読み始めましたが、読み進めるにつれ涙が止まりませんでした。17歳の高校生女子である「私」が親友の悩みに気付き、心の中にある真の気持ちに静かに寄り添い続けたひと夏のお話でした。その悩みは「予期せぬ妊娠」。
ある時、親友は「自分で育てるのが難しくなった親は施設に預けるのが手段としてある」と口にします。高校生女子二人のありふれた会話ではありません。「予期せぬ妊娠」に戸惑い、誰に相談いたらいいのかわからない、どうしたらいいか教えてほしいけれど自分のことだと気付かれたくない、助けてと言いたいのに声を上げることができない。それに気付いた主人公は静かに親友に寄り添います。あなたは大切な人とメッセージを出し続け、焦らず、親友のそのままを受け留め、親友が自ら動くペースを見守ります。
「予期せぬ妊娠」は小説の中だけの話ではありません。夏が終わり秋になる頃、私は毎年数件の話を耳にしています。残念ながらネットで「妊娠SOS」と入れても愛媛県内の団体の連絡先は出ないため、その人が相談機関に繋がったのかがとても気になっています。
どうかどうか、一人で抱え込まないでください。あなたとあなたが大切に守っている小さな命、それは二つの宝物です。私たち子どもリエゾンえひめにSOSのシグナルを出してください。また、周囲の方は悩んでいる微かな声「夏の終わりのSOS」をキャッチしたら是非私たちに繋いでください。
(石丸)
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