影を売っている店
立秋を過ぎましたが連日35度を超える酷暑、残暑お見舞い申し上げます。
この時期外を出歩く時に、こんなものがあればと思うもの、それが「影」です。炎天下を自転車で移動する時に、影がすっぽり体をカバーしてくれて涼しい風が吹いていたらといつも願っています。そして、このおはなし『影屋』(「森のお店屋さん」(アリス館)改作おはなしかご)を思い出します。
夏の暑い日に、森の動物たちが森を歩いていると「影はいりませんか?」と声が聞こえてきます。そこには大きな木があって木の枝に「影屋」と看板がかかっていました。動物たちは暑い日に強い日差しを避けることができるそれぞれに丁度良い影を受け取ります。影は重くも暗くもなく、陽ざしが強すぎる時や眩しすぎると感じる時に役に立ちます。
影は暑い日の外で役に立つだけではありません。動物のお母さんたちは口コミで影屋のことを聞いて相談に来ます。子どものいろいろなことが気にかかって仕方ないお母さんたちは、「心がくたくたになった」と話します。お母さんたちの話をゆっくり聞いた影屋は、「丁度よい影がありますよ。」と言って眼鏡の形の影を渡してくれます。影の眼鏡は他の誰からも見えない、心の眼鏡です。影の眼鏡をかけると、それぞれが囚われていたいろんな事が気にならなくなり、心が穏やかになります。
森の大きな木は傍を通る動物たちの様子をしっかり見て、「影はいりませんか」と静かに声をかけます。木陰で涼しい風が吹く中、影屋は困っていることを静かに聞いて受け止め一緒に考えます。影屋はあなたの近くにもあります。「子どもリエゾン」という看板が目印です。どうぞ立ち止まってください。少し休んでお茶を飲んでお話ししませんか。
(石丸)
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