モッコウバラの便り
「モッコウバラが咲きました。他の薔薇の蕾も少しずつ膨らんでいます。」折しも降り出した雨と風に桜の花びらが舞うある日の夕刻、届いたお便りには一枚の写真が添えられていました。写真は八重の黄モッコウバラ。その花ことばは「初恋・素朴な美・幼い頃の幸せな時間」
集うメンバーは4人。私たちは同い年、同じ職場で社会人をスタートしました。それからの三十数年間は、それぞれに仕事と家庭、子育て、親の介護等で目まぐるしく多忙な日々を送り、今は各自次のステップを歩んでいます。
私たちが集う場所は優しいお便りをくださった彼女の庭。そこは、三十数年の時間をかけて彼女が一つひとつ自らの手で作り上げたもの。四季折々の自然を愛でることができる豊かな空間のこの庭で、花や草木の名前をたくさん知りました。彼女は、花を楽しみ、アレンジフラワーを作り、それらをデザインしたステンドグラスを作ります。また、庭に設けたピザ窯に薪で火を起こしてピザを焼いてくれます。畑で収穫した野菜やフルーツはサラダやスープ、デザートになる、全てが手作りです。これらは彼女には普段通りのこと。「子どもたちにこんな体験をさせてあげたい」と、彼女にお招きいただいた時にはいつも思っています。手作りの一緒に過ごす豊かな時間は大切な記憶となります。
モッコウバラの花ことば「幼い頃の幸せな時間」。子どものそばにいて、声を聴き、手をつなぎ、手作りの時間を過ごす、普段の生活の何でもないことが幼い頃の幸せな時間となります。その幸せな時間は、つらいこと苦しいこと耐えがたいことに直面した時には、心の支えとなるかけがえのない宝物です。今共にしている手と時間が、未来へ繋がっていきます。
(石丸)
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