コラム

感謝

 私はコーヒーが好きです、ホットコーヒーです。
 その方はアイスコーヒーが好きで、毎日マイ・アイスコーヒーを職場に持参していました。壁で仕切られ顔の見えない机のあたりから、毎日のようにタンブラーの氷の音が聞こえていたものです。
 子どものために、その家族のために役に立ちたい。小児科医なら誰もがそう思います。その方は、スタッフに対しては寡黙でしたが、子どもや家族には多弁で誰よりも優しい方でした。穏やかなその方が、行政に対して「子どもを大切にしなければ、この国は滅びますよ」と強い口調でお話ししたのを聞き、私は驚くとともに、ともに仕事をしていることを嬉しく誇りに感じました。
 「自宅で暮らせない子どもたちのためにNPOを作りたい」という私への協力を快諾してくださり「ともに新しい愛媛モデルをつくりましょう」とまでおっしゃってくださったその方が突然亡くなった後、氷の音が聞こえなくなった机を整理させていただきながら、予想以上に多くの仕事を子どもたちのために黙々とされていた事を知り、涙があふれました。
 こころから感謝しています。
(西﨑)

【次回:待つことは難しい

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